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あずきのでんぷんについて

和菓子の原料である餡(あん)は主に豆類の「澱粉」を利用した日本独特の嗜好食品です。餡の原料には豆として小豆、インゲン豆(手芒豆、金時豆、白金時豆、ウズラ豆等)、ササゲ豆、ソラ豆、えんどう豆等が使用されています。餡を作るには澱粉は不可欠な成分であり、主成分でもあります。一般に製餡原料として使用される豆の澱粉含有量は50%前後です。

当社では、小豆を中心として各種豆類(小豆、手芒豆、金時豆、えんどう豆等)の澱粉についての研究を行いました。各種豆を化学的に処理し、澱粉粒子を取り出し、顕微鏡観察をした結果、小豆の澱粉粒子の大きさは20~30μm(マイクロメートル)(1μm(マイクロメートル)は1/1000mm)で他の豆の10~20μm(マイクロメートル)に比べ一番大きいことが分かりました。この澱粉粒の大きさの違いが餡の性質と関係すると考え、豆から取り出した澱粉で様々な研究を行いました。

小豆澱粉
大正金時豆澱粉

研究結果

  1. 豆澱粉の粒子が大きいほど加熱したときの膨らみが大きく、試験を行った豆の中では小豆が最も大きく膨らむことが分かりました。
  2. 一般に、澱粉はアミロースとアミロペクチンの2成分から構成されており、豆によってその量が異なります。小豆は他の豆に比べてアミロペクチンが多くアミロースが少ないことが分かりました。
  3. 一般に、アミロース含量が少ないと糊化開始温度が低くなるといわれています。小豆はアミロース含量が最も少なく、糊化開始温度は最も低いことがわかりました。このことから、小豆は他の豆に比べて比較的炊きやすい豆といえます。
  4. 小豆はアミロース含量が少ないため澱粉を加熱して糊(のり)にしたときの粘度が、製餡原料豆の中で最大であることが分かりました。
  5. 一定濃度の澱粉と水の混合物を加熱して糊化した澱粉糊の硬さと、それぞれの豆を餡にしたときの硬さに豆中のアミロース含量が影響することが分かりました。アミロース含量の高い豆ほど固い澱粉糊、煉り餡を作り、小豆はアミロース含量が少ないため他の豆に比べて比較的やわらかい煉り餡となることがわかりました。
  6. 小豆の煉り餡は他の豆の餡に比べて、さらっとしており口や歯、舌等にくっつく性質(付着性)が小さいことが分かりました。

このように澱粉粒子の大きさやアミロース含量の違いが煉り餡の性質に影響を及ぼすことが分かりました。特に小豆は他の豆に比べてやわらかく、口溶けの良い煉り餡になることが分かりました。

参考資料

(1)アミロースとアミロペクチン

澱粉はグルコース(ブドウ糖)が約1000~10万個以上結合したもので、その結合の仕方によりアミロースとアミロペクチンの2種に区別されます。アミロースは全体としてはラセン状の形態をとり、アミロペクチンは網の目のような構造をしています。

アミロースのラセン構造モデル
アミロペクチンの網目構造モデル

久保田紀久枝・森光康次郎編. 食品学(新スタンダード栄養・食物シリーズ5). 東京化学同人. 2016

一般に、澱粉は約20%のアミロースと約80%のアミロペクチンからなっています。

澱粉中のアミロースとアミロペクチンの存在割合(%)

アミロース アミロペクチン
小豆 23 77
エンドウ豆 24 76
金時豆 26 74
うるち米 15-25 75-85
もち米 0 100
小麦 21-27 73-79
とうもろこし 21 79
じゃがいも 20-22 78-80
さつまいも 17-18 72-73
くず 23-24 76-77
タピオカ 16-17 83-84

吉元寧ら.豆類澱粉の分子構造と糊化特性.応用糖質科学.2001;48(4): 317-324

独立行政法人農畜産業振興機構. 植物が創り出す―さまざまな「でん粉」の性質.
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000047.html(2019年1月29日)

例えば、お米の場合、アミロース含量の多少によって粘りに違いがでます。おいしいと言われている品種はアミロース含量が低く、アミロペクチンが多く含まれています。又、もち米はアミロースが全く含まれず100%アミロペクチンでできています。餅特有の粘り気の原因はそこにあります。一般に、豆澱粉のアミロース含量は20~30%ですが、豆の種類によりその量は様々で、澱粉の粘りや煉り餡にしたときの食感に影響を与えています。

(2)澱粉の糊化

生澱粉は冷水には溶けませんが、水によく混ぜて55~80℃で加熱すると澱粉粒子が膨らんで、粒状構造が壊れて全体が粘度の高いのり(糊)になります。この現象を澱粉の糊化といい、澱粉の糊化開始温度は澱粉の種類や濃度などによって異なります。

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