当社では、小豆を中心として各種豆類(小豆、手芒豆、金時豆、えんどう豆等)の澱粉についての研究を行いました。各種豆を化学的に処理し、澱粉粒子を取り出し、顕微鏡観察をした結果、小豆の澱粉粒子の大きさは20~30μm(マイクロメートル)(1μm(マイクロメートル)は1/1000mm)で他の豆の10~20μm(マイクロメートル)に比べ一番大きいことが分かりました。この澱粉粒の大きさの違いが餡の性質と関係すると考え、豆から取り出した澱粉で様々な研究を行いました。
このように澱粉粒子の大きさやアミロース含量の違いが煉り餡の性質に影響を及ぼすことが分かりました。特に小豆は他の豆に比べてやわらかく、口溶けの良い煉り餡になることが分かりました。
澱粉はグルコース(ブドウ糖)が約1000~10万個以上結合したもので、その結合の仕方によりアミロースとアミロペクチンの2種に区別されます。アミロースは全体としてはラセン状の形態をとり、アミロペクチンは網の目のような構造をしています。
久保田紀久枝・森光康次郎編. 食品学(新スタンダード栄養・食物シリーズ5). 東京化学同人. 2016
一般に、澱粉は約20%のアミロースと約80%のアミロペクチンからなっています。
澱粉中のアミロースとアミロペクチンの存在割合(%)
アミロース | アミロペクチン | |
---|---|---|
小豆 | 23 | 77 |
エンドウ豆 | 24 | 76 |
金時豆 | 26 | 74 |
うるち米 | 15-25 | 75-85 |
もち米 | 0 | 100 |
小麦 | 21-27 | 73-79 |
とうもろこし | 21 | 79 |
じゃがいも | 20-22 | 78-80 |
さつまいも | 17-18 | 72-73 |
くず | 23-24 | 76-77 |
タピオカ | 16-17 | 83-84 |
吉元寧ら.豆類澱粉の分子構造と糊化特性.応用糖質科学.2001;48(4): 317-324
独立行政法人農畜産業振興機構. 植物が創り出す―さまざまな「でん粉」の性質.
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho07_000047.html(2019年1月29日)
例えば、お米の場合、アミロース含量の多少によって粘りに違いがでます。おいしいと言われている品種はアミロース含量が低く、アミロペクチンが多く含まれています。又、もち米はアミロースが全く含まれず100%アミロペクチンでできています。餅特有の粘り気の原因はそこにあります。一般に、豆澱粉のアミロース含量は20~30%ですが、豆の種類によりその量は様々で、澱粉の粘りや煉り餡にしたときの食感に影響を与えています。
生澱粉は冷水には溶けませんが、水によく混ぜて55~80℃で加熱すると澱粉粒子が膨らんで、粒状構造が壊れて全体が粘度の高いのり(糊)になります。この現象を澱粉の糊化といい、澱粉の糊化開始温度は澱粉の種類や濃度などによって異なります。